れるように、相良どのが、そのような大金持ちでなかったとすれば、そのおゆうさんの大資産は、いったいどうなった? 誰が譲られたか。それとも、消えうせたか。じつに、合点のゆかぬはなしである」
お高は、他人《ひと》ごとのようにぼんやり聞いている。ぴったり来ないのだ。それは、まるでお伽噺《とぎはなし》だ。母がそんな江戸で一、二の富豪だったとしたら、母の死後、父ももっといい生活ができたはずだし、自分にしたところが食べるための苦労は知らずにきたであろう――お高は、この一空さまをまじめに相手にしているのが莫迦《ばか》々々しくなってきた。
「きっと母がその財産とやらをつかってしまったのでございましょうよ。さもなければ、父が、海へでもほうったのでございましょうよ」
「わしは、ふざけておるのではない。海へ沈めようが山へ埋めようが、一代や二代でつかいきれる金ではないのだ。ことに、すっかりおゆうさんの名義で、だれも指一本触れられんようになっておった」
お高は笑い出してしまった。
「よくご存じでございますねえ。どうしてそんなにご存じなのでございますか」
すると、一空さまは、その、おゆうの莫大《ばくだい》な財
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