ここらの寺と武家屋敷に囲まれて、切り離されたように独自の発達を遂げてきた一劃《いつかく》だ。それが、金剛寺門前町である。なかなかにぎやかな街景だ。
ことに、今夜は縁日が立つらしく、風の中で、地割りの相談をしている人がある。子供相手の面白焼きが地面に筵《むしろ》を敷いて支度をしている。風に追われて、娘たちが派手な衣装をひるがえして町を横ぎったりしているのだが、何となくひっそりしているのである。
といって、この風にもかかわらず、人通りは、いつもより多いようだ。それでいて、華《はな》やかな笑い声一つなく両側の店をのぞいて行くと、暗い額部《ひたい》をした主人《あるじ》や番頭が、ひそひそ話し合っている。やくざ者らしい風俗の男たちが、上がり框《がまち》に腰かけて、真っ赤な顔をして、何かしきりに弁じ立てていたりする。丁稚《でっち》が、そろばんを突っかえ棒に、きちんとすわったまま眠っているような、いつもの風景もない。
出たりはいったりする女の顔まで、殺気走って、何かしら、押えつけている昂奮《こうふん》が感じられるのだ。その、ひそかなる戦意といったようなものが、風といっしょに、町全体に流れわたって
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