空さまのことばにお高はいよいよ乗り出して、
「どうしてそうあなた様は、父や母のことをごぞんじなのでございますか」
「母者人の柘植ゆうと、生前近しくしておりました」
「親類の方ででもいらっしゃいますか」
「同じ柘植じゃ。遠縁の者です」
「でも、わたくしの顔が、そんなに母に似ておりましょうか」
「似ているとも。そっくりじゃわい」
「わたくしの顔から、母のことを思い出しなすったにしても、はじめ、妙なお顔をなさいましたねえ。いいえ、今でも、妙なお顔をなすっていらっしゃいますよ。どういうわけでございましょうか」
「ははは」一空さまは、へんなぐあいに笑ったきり、黙りこんでしまうのだ。やがて、やっと感情を押えたような、この人には珍しい、低いきまじめな声だ。
「古い思い出は、いつもしめっぽいものじゃて。おゆうさんは、[#「おゆうさんは、」は底本では「おゆうさんは。」]若死にだった」
 おゆうというのは、お高の母であった。お高は一度に、小女《こども》のような甘い感傷に包まれていった。
「どうぞ母のことをお聞かせなすってくださいまし」お高は、うつむいていた。「わたくしは、ちっとも覚えておりませんでございま
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