方の姓を柘植と申しました。でも似ているとおっしゃいますのは、わたしがどなたかに似ているのでございますか。そういえば、和尚さまも、俗名を柘植様とおっしゃったそうでございますね」
一空さまは、お高の顔に、改めて眼を凝らしていた。何を考えているのか、その自分の考えていることが信じられないというようすだ。やがて、苦痛の色が、雲のように一空さまの額部《ひたい》を走った。それには、何かはかない思い出を暗示するものがあった。
お高は、へんに思った。一空さまのそばへ行ってすわった。
「どうなすったのでございます。一空さまは、うちの母をご存じでいらっしゃいますか。何かつながりに、なっていらっしゃるのでございますか」
一空さまの眼は、恐ろしいものを見てるようにさえ見えるのだ。一空さまが、きいた。
「お父うえのお名は、何といわれたかな」
「父は相良《さがら》と申しましてございます」
憎悪と恐怖のいろが、一空さまの表情《かお》のうえで一時に交錯したから、お高がいっそうぎょっとしていると、
「相良|寛十郎《かんじゅうろう》どのであろう。存じておる。深川の古石場《ふるいしば》にお住みだったな」
という一
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