「でも、証しの立てようがないじゃないか。みんな向こうへついていて、おかみさんなんか、頭からあたいを泥棒あつかいにするんだもの。何が何だか、あたいにゃさっぱりわかりやしない。ほんとに、奇妙な話だねえ」
 久助は、ぎっくりした。急に立ちどまって、闇黒《やみ》を通してお駒ちゃんの白い顔をみつめた。
「お駒、ほんとにおめえは、おぼえのねえことなんだろうな」
 うたがいが、久助の声に恐怖を持たせた。お駒ちゃんは、あっさり受け流した。
「何をいってるんだい。いやだよ、お父つぁん。お前までそんなこというのかい。何ぼ何だって、あたいは泥棒じゃありませんからね。みんな仲間の女中が仕組んだことさ。見えすいてるじゃないか。それだのに、あのお民ってお内儀《かみ》さんに、そこんとこを見分ける眼がなかったから、いっそのこと、あたいが出たまでのことさ」
 久助は安堵《あんど》の吐息をもらして、
「ほんとにおめえが盗ったのでなけりゃあ、それはそれでいいとして、それからどこで何をしていた。二年といやあ、決して短え月日じゃあねえ」
「そりゃお父つぁん。これでもいろんなことがあったよ。阿国歌舞伎《おくにかぶき》で、あち
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