ねえ」
 じっさい、浅い春らしい底冷えのする夜であった。おせい様がそういっているときも、そのおせい様のことばに合わせるように、さびしい風が、大きな音をたてて家をゆすぶって過ぎた。おせい様が、つづけた。
「あついお酒を召し上がると、あったかくなりますでございますよ」そして、部屋を出て行こうとしていた久助に、命じた。「特別に熱くして、一本持って来てくださいよ。大いそぎですよ」
 まもなく久助は、命じられた熱燗《あつかん》の徳利を持って来て、お駒の前へ置いた。前へ置いたきり、久助はあきれたように、黙ってお駒ちゃんの顔をみつめているので、お駒ちゃんは困ったようにうつ向いてしまった。おせい様が、久助をたしなめた。
「お酒を持って来たら、お酌をしてさしあげるものですよ」
 久助は不承無承に、徳利を持ってお駒ちゃんのさかづきにつごうとした。なかの酒が煮えくり返っているほど徳利があつくなっていたので、久助はあわてて下へおろして、耳へ手をやった。それから、ふところから手ぬぐいの畳んだのを出して、それを当てて徳利を持った。酒をつぎながらも、久助は眼を凝らして、お駒ちゃんの顔を見ていた。
 お駒ちゃんは、つ
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