てん》を着た、六十近い白髪《しらが》の老爺《ろうや》が腰をかがめて、料理の盆を持ってはいって来た。
 それが、いま話に出た久助であった。


    宵宴《しょうえん》


      一

 自分で料理をしてじぶんで給仕までしないと気がすまないという変わり者の久助だ。その久助が、料理の皿《さら》をいろいろと盆にのせて、部屋へはいって来たので、三人は、そっちを見た。
 おせい様は、その腕ききの奉公人をあたらしく得たことを誇るように、磯五の顔を見上げて笑った。その笑いは、見ようによっては悲しいようなまたうれしいようなわらいであった。
 それは、磯五に対するおせい様の感情を、よく現わしていた。これからこの人と、こうして毎日三度の食膳に向かうようになるのだと思うと、何かよりかかるものができたようで、このごろのおせい様は、行く手の地平線がぽうっとあかるんできているような気がしていた。
 このおせい様は、男の腕にやんわり寄りかかって世の中を送るようにできている女なのだ。が、それも、軽くやさしく寄りかかるのだから、男のほうでは、すこしも重荷にならないというタイプである。おせい様は、そういった女だっ
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