ふりあげた磯五だ。
「何をいやあがる! さ、もう勘弁ならねえから出てうせろ。出て行け、この宿なしの牝猫《めすねこ》――」
お駒ちゃんも、すっかり地のお駒ちゃんにかえっていた。
「出てゆけだって。これあ面白い。出て行きましょうとも。ここを出たら、その足で、あたしゃ拝領町屋へ駈けこんで、あのおせい様とかいう色きちがいに、何からなにまでほんとのことをぶちまけてやるんだ。あたしがお前さんの妹かどうか、なんにも知らないものに、こうやっていいお着々《べべ》をきせて、何だって遊ばせておくのか、みんなあなた様をおだまし申そう磯屋のこんたんでございます、とね。考えてごらんよ。どんなことになるか。
何だって? 宿なしのめす猫? へん、お前さんは何だい、立派な大あきんどでいらっしゃいますよ。日本橋の老舗磯屋の旦那でいらっしゃいますよ。うそつき! 詐欺師! 女たらし! ぶつならお打ち。強い人に弱い者は、弱いものにかぎって、強いんだってね」
お駒ちゃんが、そんなややこしいたんか[#「たんか」に傍点]を切って、磯五のほうへからだをにじり寄らせてくるものだから、磯五が困って、ふりかぶった拳《こぶし》を持ちあつ
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