いるように、磯五には思えた。
それも、そういうことを口に出したのでも、けぶりに見せたのでもないのだが、どうも磯五は、お市が邪魔になってきていた。このあいだからひまを出そうと考えていた。事実きょうは、お市の代わりにお針頭になる、おしんという女が、人の仲介《なかだち》で目見得にくることになっている。
磯五は、それを思い出して、悶着《もんちゃく》のないようにこの出し入れをしなければならないと思った。新しいおしんという女は、手腕《うで》も達者だし、すこしは人も使えて、人間もいいというのである。そのほうを確かめてから、機をみて、お市に暇をくれることにしよう。それまでは、何もいわないほうがいい。町内のものではあるし、それに、いつかのことで弱点を握られていもする。
そうでなくても、やむを得ない場合のほか、女性を敵にまわさないように気をつけるのが、磯屋五兵衛のモットウであった。ともかく、こんにちの彼をして、この大店のあるじたらしめているゆえんのものは、この生活信条に負うところ少なくないのだった。
磯五は、だまって、そのお針部屋の前を通り過ぎて、奥庭から居間へ上がろうとしていた。
樹のかげに、
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