とのように、龍造寺主計が、壁ぎわから声を持った。龍造寺主計は、じれったそうに、舌打ちをするのだ。
「ちっ。のんきだな。聞いていれば、この若松屋を、ひと手に渡そうという、最後の場合ではないか。よほどこみ入った事情があるらしいことは、わたしにもわかるが、もうすこし、何とかして踏みこたえてみる気はないのかな。惜しい」
 若松屋惣七の顔は、見るみる冷笑がひろがった。武士に、何がわかる。さむらいというものは、人を斬り殺すことを考えるか、もったいぶって見せかけて、それで、ただで衣食することを考えるか、していればいいのだ。
 草のように蒼い若松屋惣七の顔が、龍造寺主計の声のしたほうを、さがした。儀礼と嘲笑《ちょうしょう》だけを、含んだ声だ。
「御厚志は、かたじけない」若松屋惣七は、武士《さむらい》に対すると、いつのまにか、前身が出るのだ。口のきき方まで、武家出らしく、角張ってくるのだ。そうでなくても、不愉快なことがあると、いつもいかつい口調になる。それが今は、武士に対して不愉快なのだから、二重に不愛想なのだ。にべ[#「にべ」に傍点]もなく、いった。
「知らぬことには、口出しをなさらぬがいい」
 お高
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