んだ。それは佐吉であった。佐吉は、白い肩を見せてすくんでいるお高を見ると、あわてて襖をしめた。
「何ですよ。そこでいってくださいよ」
佐吉は、外でいった。
「離室《はなれ》のお客さんが、御酒《ごしゆ》を所望なすっていられるのです。宿をするぐれえなら、寝酒はつきものだとおっしゃるので」
「そうですよ」お高は、おかしかった。「出して上げてくださいよ」
佐吉の跫音が遠ざかってゆくと、まもなく、ひとりで酒をくみながら唄うらしい、龍造寺主計の声が、庭のやみに漂って聞こえてきた。
「きんらい酒にあてられて――」
お高は、床のなかで、小さな声をたてて笑った。
お高は、金策に出たきり帰らない、若松屋惣七のことを考えて、眠れなかった。じぶんの考えたことが、すべて失敗に終わったことも、思い出された。おせい様に、ほんとうの磯五を見せようとして、だめだったこと。若松屋惣七様からお金を取り立てることをよさせようとして、よさせられないこと。磯五に、ひとりでぶつかってもみたが、何にもならなかったこと。それからそれと、あたまが、冴えていった。
早く起きた。おっくうに思いながら、身じまいをすました。滝蔵が、膳
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