て、とっさに何もかも忘れて、ふたりのあいだへ割り込もうとした。
一空和尚が、にこにこ笑って、抱きとめた。
龍造寺主計が、声だけお高のほうへ向けた。
「会うたぞ。この男なのだ、さがしているのは。もう、若松屋に頼むことはない」
寒雨《かんう》
一
自分を忘れたお高だ。また、ふたりのあいだへ割り込もうとした。名のみの良人であるばかりか、いまは敵となっている磯屋五兵衛だ。が、この磯五の急場にあたって、お高のこころに残っている愛の破片が、お高をじっとさせておかなかったのだ。お高は、一空和尚の腕をふりほどいた。磯五をかばうように、龍造寺主計の眼下に立った。
龍造寺主計《りゅうぞうじかずえ》は、はや鯉口《こいぐち》を押しひろげて、いまにも右手が、柄《つか》へ走りそうに見えるのだ。
「何ごとか存じませんでございますけれど」お高は、うわずった声だ。「ここは、御門内でございますよ。さっき御制札がございましたよねえ。何とございましたかしら。御門内にて、とんぼ獲ることならんぞよ――」
笑おうとした。笑えなかった。お高を見おろしている龍造寺主計の眼が、笑った。
「うむ。
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