く抗《あらが》った。
「いえ。もうよろしいのでございます」
 が、龍造寺主計に手をとられて、せきたてられてみると、もともと自分のことなので、また衣かけの松のほうへ引っかえして、龍造寺主計を案内しないわけにはゆかなかった。一空和尚も、ついて来た。お高は、磯五はもういないだろうと思った。いてくれなければいいと願った。
 衣かけの松の見えるところまで来ると、お高は、立ちどまった。羽織を着直した磯五が、ぶらぶらこっちへ歩いてくるところであった。
「あれか」
「はい。あの人が、磯屋五兵衛さまでございます」
「ふうむ。あれが、な」
 龍造寺主計は、感心したように、うめくようにいった。そして、ぼんやりお高の手を放して、足早に、磯五に近づいて行った。ぴたりと、磯五の前にとまった。
 磯五は、ちょっと驚いたようだったが、平気で、龍造寺主計をみつめていた。龍造寺主計は、左手ですこし刀を押し出して、口をまげて、お高をかえり見た。それから、また、じっと磯五を見すえた。
「化けおったな、こいつ」
 磯五は、顔いろひとつ変えなかった。お高のほうが驚倒した。お高は、龍造寺主計の腰にある刀が、今にも走り出そうな気がし
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