しり藁店へ出かけて行って、お民さんに談じこんでやりましょうよ」
たちかけるのである。磯五は、あわてた。
「いけません。そんなことをなすっては、いけません。何といっても、お駒が、吉田屋さんへ奉公に上がっていたことのあるのは、事実ですし、それに、過ぎ去ったことではあり、いまとなっては、反証《あかし》の立てようのないことですから――」
「それもそうですねえ。それでは、あの人が、伊万里とかから帰ってきてから、会って、よくいいましょうよ」
「わたしが、三年ぶりに江戸へ舞い戻りましたときは、お駒は、もとの磯屋さんに奉公しながら、仕込みのこつ[#「こつ」に傍点]やなどを呑みこもうと、それとなく見ておりました。おかげをもちまして、わたしが磯屋五兵衛となりましたこんにち、あれの、そのときの下地が、たいそう役に立っているわけでございます」
「ほんとに、あなたといい、お駒さまといい、このおふたりの御兄妹ほど、そろいもそろって、世の中のあら浪《なみ》にもまれたお方は、ござんすまいねえ」
「何だか、わたしも、そんな気がいたしますよ。ふり返ってみますと、生まれてから、おせい様にお眼にかかるまでは、長いながい山み
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