が、誰か顔のひろい人はないかときくので、おどろいていた。
 龍造寺主計という人は、こんなふうに、人を驚かしてばかりいるのだ。だから、人がおどろくのには、平気なのだ。
 立ちどまったついでに、ぽんぽんからだの塵埃《ごみ》をはたきながら、
「貴様は、物|識《し》りらしい面《つら》をしておるからきくのだ。江戸において交際《つきあい》のひろい人物がひとり、至急に入要である。名をいえ」
 茶店のおやじは、困ってしまった。きちがいかもしれないと思ったので、さからわないに限ると思った。
「物識りらしい面とは、こんな面がお眼にとまって恐れ入りましてございます。しかしお武家さま、江戸で、顔の広いお方と申しましても、どういうお方でございましょうか。侠客《おとこだて》の衆のようなお方でございましょうか」
「いや。町人仲間で、顔の売れている人物のところへたよって行きたいのだ」
「それはそれは。して、どのような御用でございましょうか、それによりましては、このおやじめが、どなたか思い出さないとも限りませんで、へえ。なにぶん、この掛け茶屋などと申す稼業《しょうばい》は、人の口が多うございまして、いろいろとまた、なが
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