は、その女に見覚えがあった。
 それは、あの、式部小路の磯屋のまえの空地《あきち》で磯五と立ち話しているところを、お高が、板囲いのあいだから隙見したことのある、女歌舞伎の太夫上がりのような、大柄な美しい女であった。磯五の妹に化けることを、お高が拒絶したので、磯五は、お高のかわりに、このお駒を妹に仕立てて来たに相違ないのである。
 初対面のあいさつをしている。蛇《へび》の膚を聯想《れんそう》させるなめらかな磯五の声がしていた。
「きょうは、このお駒にもお近づきを願いかたがた、本人の口からお礼を申させようと思いましてね、急に思い立って、やって参りましたよ」
「御丁寧に、まあ、ほんとに、五兵衛さんのお妹さんだけあってお駒さんは、お美しいお方でいらっしゃいますこと」
「いつも兄をはじめ、商売のほうまで、いろいろと御厄介になりまして、ありがとうございます。それに、近いうちに、おめでたがございますそうで――」
 磯五に劣らない、したたか者らしい声音である。おせい様は、おめでたといわれて、もじもじ磯五のほうを見て笑った。
「兄様が、せっかく親切にいってくださるものでございますから、こんなお婆《ばあ》
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