ます」
「ただいま、どちらにおいででございますか」
「はい。ここにおりますでございます」

      四

 いってしまって、お高は、はっとした。これはいけないと思ったのだ。いまおせい様に、自分の身分を知られてしまっては、若松屋の金のほうのことが、かえって面白くないことになるかもしれないのだ。ここは、あくまでも、ほかに磯五の女房というものがあって、それが生きていることにして、じぶんはやっぱり、磯五の従妹ということにしておいたほうがいい。
 これは悪いことをいったと思って、お高が、内心悔やんでいると、都合のいいことには、おせい様は、お高のいった意味をはき違えたのだ。
「こことおっしゃるのは、江戸のことでございますか」
「さようでございますよ。江戸にいらっしゃるのでございますよ」
「江戸にねえ。近ごろは、いつお会いでございますか」
「その、磯屋のおかみさんにでございますか。毎日お眼にかかっておりますでございますよ」
「それでも、五兵衛さまは、三年前に逃げて、まもなく亡《な》くなったと、確かにおっしゃってでございます」
「それが、あの人のうそなのでございます。別居して、江戸にいるのでござい
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