い人であったに相違ないと、お高は思った。いまでも、おせい様の表情は、夏の夕ぐれのようににおやかなのだ。びいどろ[#「びいどろ」に傍点]のように、無邪気に、感情がすいて見えるのだ。
お高は、玉のようなものが上がって来て、咽喉《のど》が詰まるような気がした。こんな人を、こんなにだますなどと、磯五という人は、何という罪つくりであろうと思った。おせい様も、おせい様だ、磯五の肚黒《はらぐろ》にはすこしも気がつかずに、すっかりまるめられて、近いうちに、磯屋へ迎えられて行く気でいるのだ。お高は、かなしくなった。決心はしたものの、こうして面と向かうと何といって切り出したらいいか、わからなかった。
従妹だと磯五がいったと、おせい様に聞かされても、お高は、すぐそれを打ち消すことができなかった。黙っていた。
おせい様は、いつものとおり、にこにこしていた。おせい様のまわりには、しばし春の風が吹いている感じがするのだ。いまその春の風がお高のほうへも吹いてきて、お高は、この人に、そんな残酷なことなど、とてもいえそうもないという気がしていた。
おせい様は、お高は遊びに来たのだとでも思っているらしく、よもやま
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