興がっていた。
 毎日のように、御影堂へ催促が飛んだ。もうできかかっているのだった。

      四

 立花出雲守の使者に渡すはずのお次第書を、糸重は、こっそり懐中していた。
 お次第書は、追加の御沙汰といって、当の式の順序を認《したた》めた、重要な書類だった。饗応役のもっとも大切な一日を、具体的に説明しているものだった。
 人気《ひとけ》のないのを見すまして、背戸の柴折《しお》り戸をあけた。
 いつものように、宵闇に紛《まぎ》れて、折助《おりすけ》すがたに装《つく》った辰馬が、ぼんやり佇《た》っていた。
 手早く、お次第書を渡しながら、糸重が、
「これは、饗応役の一ばん大事の日のことを、細ごまと書いた、申せば、お役のこつ[#「こつ」に傍点]なそうにございます。立花様から受取りに来られれば、失くなったことがわかって、おっつけ騒ぎになりましょう。」
 辰馬は、頬被りの奥から、
「ほかに、心得は?」
「当日は、必ず大紋烏帽子《だいもんえぼし》のこと――。」
「その他――気が急《せ》く。」
 垣根を離れて、行こうとするので、
「それから勅使院使さまがお上りのとき、吉良とお取持役おふたりが
前へ 次へ
全47ページ中36ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
林 不忘 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング