仇討たれ戯作
林不忘
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)六樹園|石川《いしかわ》雅望《まさもち》は
|:ルビの付いていない漢字とルビの付く漢字の境の記号
(例)六樹園|石川《いしかわ》雅望《まさもち》は
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号)
(例)※[#「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2−13−28]画家と
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一
六樹園|石川《いしかわ》雅望《まさもち》は、このごろいつも不愉快な顔をして、四谷内藤新宿の家に引き籠って額に深い竪皺を刻んでいた。
彼はどっちを向いても嫌なことばかりだと思った。陰惨な敵討の読物が流行するのが六樹園は慨嘆に耐えなかったのである。
客あれば彼はよくこの風潮を論じて真剣に文学の堕落を憂えたものであった。
一度三馬が下町の真ん中からぶらりとこの山の手の六樹園|大人《たいじん》を訪れたことがあった。文化三年の火事に四日市の古本店を焼け出されて、本石町新道《ほんこくちょうじんみち》に移ってからで、式亭《しきてい》三馬はその戯
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