3字下げ]
一、二寸抜きかける。
[#ここで字下げ終わり]
[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
家老矢沢 (あわてて)これ、御前ですぞ。鯉口を拡げるはおそれ多い。御遠慮を、御遠慮を。
抜きかけた侍 (はっ[#「はっ」に傍点]と気づいて)見たい一心に駆られて、つい心づきませんでした。粗忽のほどは、御前よしなにお取りなしを。
[#ここから3字下げ]
ぱちんと鞘へ返して、手を突く。
[#ここで字下げ終わり]
[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
播磨 なんだ。構わぬ。抜け抜け。余も見たい。(矢沢へ)爺い! 余計な口出しして、興醒めな奴じゃ。大名だとて武士だぞ。白刃に驚くか。抜かせい。
矢沢 それでは、お許しが出ましたによって、御自由に。
抜きかけた侍 おそれいりまする。では、御前をも顧みませず――。(作法どおりすらり[#「すらり」に傍点]と抜いて、見入る)ううむ、物凄き作往《さくゆ》き!
隣の侍 やっ、斬れそうですなあ。
[#ここから3字下げ]
と覗き込む。刀は転々と座をめぐって、人々のあいだに感嘆の呟き起る。
[#ここで字下げ終わり]
[#ここから改行天付き、折り返して1
前へ
次へ
全36ページ中16ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
林 不忘 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング