げ]
敵の汝に逢わんとて
水陸幾万里
千辛万苦を尽しつつ
輪船火車を乗り代えて
露清両地を過ぐるとき
行装のたびごとに
天道様に祈りをなし
イエス氏にも敬拝すらく
平常一度び逢うことの何ぞ遅きや
心し給え心し給え
東半島大韓帝国に心したまえ
[#ここから3字下げ]
一同はじっと聴き入っている。
[#ここで字下げ終わり]
7
[#ここから3字下げ]
時間的に遡《さかのぼ》って、この場の前半は前場と同時刻を繰り返す。
黄成鎬方台所。前の場の左側につづく部屋。舞台正面、下手寄りに廊下へ開くドア。右側に前場の集会所に通ずる扉あり。固く締まっている。反対側に裏口。窓はない。
片隅に土の竈《かまど》、流し場、水桶ありて、鍋、釜、野菜の籠など土間に置いてある。壁にはフライ・パンなどかかり、棚に茶碗、皿小鉢類。他の隅に薪を積み、中央に低い粗雑な卓子と椅子二脚。暗い電燈。
黄瑞露――黄成鎬妻、五十歳ぐらい。ほかに安重根、柳麗玉、禹徳淳、朴鳳錫、白基竜、黄成鎬、同志一、二および前場の青年多勢と露国憲兵数名。近所の人々。
前場の初めと同じ時刻。壁を通して隣室の青年らの話し声が間断な
前へ
次へ
全119ページ中59ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
林 不忘 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング