やって来る真の目的は、鉄道買収などとそんなちっぽけなことではあるまいと思うんだ――。
禹徳淳 何の話だ。例の一件かい。
同志一 (青年Eへ)無論さ。韓国の問題を解決するために、ロシアと清国の諒解を求める必要があるんだ。だから、ハルビンでココフツォフと会見した上で、場合によっては北京を訪問する意思らしいぞ。
青年I (一隅から)おい、昨日のジャパン・タイムス見たか。社説に出てるぞ。日本とロシアが満洲を分割するんだそうだ。それで、満洲へ来ることが決ってから、伊藤は桂首相と頻繁《ひんぱん》に往来しているし、日本皇帝にもたびたび拝謁している。そして、連日長時間にわたる閣議が開かれているというんだ。
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この以前より禹徳淳は、電燈を覆っている赤い紙片を※[#「てへん+毟」、第4水準2−78−12]り取って、青年たちの騒然たる会話の中で、声高に読み上げている。
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禹徳淳 何だ、こりゃあ――うむ、こないだ配った歌だな。おい、君らみんな知ってるだろう。よし、一緒にやろう。読むぞ。(慷慨の調にて大声に)
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