成鎬の問いを笑いに紛らして)ははははは、君たちはこの、火のないストウブを囲んでどうしようというんだ。
青年G (壁にもたれて、懐疑的に)火のないストウブか。ほんとだ。火のないストウブに当って、いくらか煖かいつもりでいる。気力のない同胞を激励してどうにかなる気でいる。運動の将来も楽じゃないなあ。
同志一 (ストウブの覆《ふた》をあけて黄成鎬へ)おやじ! 火を入れろ。
同志二 石炭はどこにある。
黄成鎬 (独語)火のねえストウブに当って煖《あった》けえ気でいる。(手真似で考える)こいつあうめえことを言った。大きにそんなものかも知れねえ。
同志二 (黄成鎬へ)何を感心しているんだ。夜が更けて来たら急に寒くなった。ストウブを焚くんだ。石炭奢《おご》れよ。
黄成鎬 火はありませんよ。石炭もありませんよ。火種もなし石炭もなしで火を燃やすのが、あんた方の仕事だ。
青年H はっはっは、あんなことを言う。
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青年Eは倒れていた腰掛けを起して馬乗りになっている。
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青年E しかし、さっきの話ですがねえ、僕あ伊藤がハルビンへ
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