す。それだけなんです。
李剛 (強く)よろしい! 家族を迎えにハルビンへ行きたまえ。
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二人は探るように顔を見合って立っている。長い間。
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李剛 (低声で)今となっては同志が黙っていまいよ。こんなに知れていることだからねえ。
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間。
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安重根 今日一日それを考えたんです――仕方がありません。ハルビン行きは止めます。止めて、自首します。
李剛 (冷く)自首! それもいいだろう。いまさかんに日本の御機嫌を取っているロシアのことだから、警察は大よろこびだ。
安重根 (間)こんなに苦しむより、いっそ自首して出たほうがどんなにましだかしれやしません。(泪ぐんで)自首します。自首すれば、とにかく問題は解決して、先生も安心でしょう。僕も安心です。謀殺未遂というやつですねえ。結構です。
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安重根は革紐で行李を引きずり、俯向いて歩き出しながら、ゆっくり自分に言い続ける。
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