です。
クラシノフ 僕も弥次りに行こう。飯にならないんじゃあ、いま家にいたってしようがない。ははははは。
李剛 (ぼんやりと)そうだ。そうしてくれたまえ。
クラシノフ 救世軍の前でやろうじゃないか。やつらの楽隊を人寄せに利用するのだ。
鄭吉炳 しかし、咽喉が耐りませんよ。あの太鼓とタンバリンに勝とうとすると、いい加減声が潰れてしまう――おや! 卓さんは? あの人を引っ張って行って卜《うらな》いの夜店を出させると、うまく往きゃあ煙草銭ぐらいにはなるんだがな。
クラシノフ 名案だ。卓さんはどこにいる。
李春華 二階に寝ていますわ。
鄭吉炳 相変らず要領がいいな。
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駈け上って行く。間もなく寝呆けている卓連俊を引き立てて降りて来る。
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鄭吉炳 お爺さんしっかり頼むぜ。ワデルフスキイの縁日へ商売に行くんだ。眼をぱっちり開けなよ。
卓連俊 (よろよろしながら)卜い者に自分の運命がわからねえように、あんたにゃあ民族の運命がわからねえ、皮肉《ひにく》だね。お互いに無駄なこった。
クラシノフ はっはっは、洒落たことを吐
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