《ぬ》かしたね。商売道具を持ってついて来たまえ。一緒にやろうじゃないか。
[#ここから3字下げ]
卓連俊は自分の寝床のそばへ売卜の道具のはいった小鞄を取りに行こうとして、上着の下から火酒の壜が転がり出る。
[#ここで字下げ終わり]
[#改行天付き、折り返して1字下げ]
鄭吉炳 なんだ、臭いと思ったら、爺さん、早いとこ呑《や》ってやあがら。さ、出かけよう。すこしパンフレットを持って行こう。
[#ここから3字下げ]
鄭吉炳とクラシノフは小冊子の束を抱えて出て行く。古ぼけた手鞄を提げて卓連俊が続く。李剛はパイプを吹かして、じっと洋燈の灯に見入っている。間。
[#ここで字下げ終わり]
[#改行天付き、折り返して1字下げ]
李春華 (静かに李剛へ近づいて)あなた、みんな外へお出しになったのね。何かお考えがあるんでしょう?
李剛 (気がついたように)うむ。考えがあるのだ、君も、今のうちに柳さんを伴れて、いつものように洪沢信のところへ貰い湯に行って来たらどうだ。
李春華 そうね。そうしましょう――では、柳さん、このひまに一風呂浴びて来ましょうか。
柳麗玉 (物思いから呼び覚まされて快活を装い)え?
前へ
次へ
全119ページ中38ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
林 不忘 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング