上りながら)いま熱いお粥ができましたから、皆さんでちょっとすましてから――。
李剛 (激しく)いかん、いかん! 急ぐんだ。それから白基竜君、君は停車場の待合室へ行って、腰掛けにごろ寝している連中のなかに安重根がいないか見て来てくれたまえ。
白基竜 僕にはさっぱり解らないが、安さんがどうかしたんですか。いったい何があったんです。
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朴鳳錫が促して、二人は急いで出ていく。
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李春華 では、あとの人だけで御飯にしましょうか。
李剛 (いらいらして)いや。二人が帰ってから、みんな一緒に食おう。
鄭吉炳 (ばつの悪い空気を感じて)今日は十七日でしたね。
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誰も答えない。開け放したドアの外を行李を抱えた安重根が通って、すぐ物蔭に隠れる。
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鄭吉炳 ワデルフスキイ街《まち》に七の日の縁日がありますから、それでは私は、その間にちょっと××運動のアジ演説をやって来ようかな。あすこの市《いち》には、朝鮮人の人出が多いから、わりに効果があるん
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