発するそうだ。ハルビンのほうは、情報を集めるように曹道先に電報を打っておいた。遼東報にも大東共報にもかなり詳しく報道されているが、まちまちでねえ。李剛さんに会ったか。
安重根 まださ。いま着いたばかりだよ。君と打ち合わしておいたとおりに、すぐここへやって来たんだが――しかし、なあ徳淳、おれは考えたよ。じつは、すこし考えたことがあるんだ。
禹徳淳 夜着くというのが心配なんだろう。それはおれも、全然考えないじゃない。まったく、夜はいっそう警戒が厳重だろうから――だが、それだけまたこっちにしてみれば、昼よりは紛れ込むに都合がいいわけだからねえ。
安重根 そんなことじゃあないんだ。会って話さなけりゃわからないことだから、手紙には書かなかったが、(笑って)会って話したところで、君は人の細かい気持ちなど解る人間じゃあなかったね。
禹徳淳 (熱心に)君は何を考えているか知らないが、君がウラジオへ出て来ると決ってから、同志の熱狂ぶりは大変なものだ。まるで救世主の再臨を待つように騒いでいる。どこから聞き出したか、下宿の連中まで知っていてねえ、今日来るそうだがどこで僕と落ち合うことになっているかとうるさく
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