い、ハルビンへおいでになるのは、その瀬踏みってわけでしょうかね。なんだか満鉄の整理に見えるとかって聞きましたが――。
客 そんなこともあるかもしれない。中村とかいう満鉄の総裁が一緒に来るそうだから。
金学甫 (客を済まして)一服おつけなさいまし。
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張首明は安重根と禹徳淳へそれとなく注意している。
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お光 金ちゃん、お前、朝御飯まだだったね。(張首明へ)あんたも、ちょっと待っていただいてすましちまったらどう?
客 ここへ置きますよ。
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代を残して去る。張首明は安重根と禹徳淳に会釈《えしゃく》し、お光、金学甫とともに、三人正面のドアから奥へはいる。禹徳淳は、安重根と並んで空き椅子に腰掛けて、しばらく双方ともじっと動かず黙っている。
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安重根 (低声に)手紙見たな。
禹徳淳 言って来たとおり調べてある。二十四日の晩の汽車らしい。
安重根 今もここにいた客がその話をしていたが、(考えて)夜か――。
禹徳淳 二十三日に寛城子を出
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