屋を出た二人の跫音《あしおと》。それが前後して階段をおりて、しばらく階下《した》に響いていたが、おいおい遠ざかっていっしょに家を離れて往くまで、女も身動き一つせずに畳にはっていた。やがて、広い邸内に人のいないことを確かめた女は、両腕に力を込めて、むっくりと起き上がった。
「馬鹿にしてるよ、ほんとに」
 と手早く帯を締め直して、
「さんざ人を踏み付けにしやあがって、くやしいったらありゃあしない。足の指へでもくらいついてやりゃあよかった。何だい、だからあたしゃ屋敷者はきらいさ」
 こんなところに長居はごめん。
 今のうちに一時も早くと、かいがいしく裾をからげて、女は手探りで縁へ出た。
 家には調度もなく、がらんとしたようすが空家らしい。
 さっきの足音のあとをたどる気。
 梯子段《はしごだん》をおりて下座敷。そろり。そろりと中廊下を、突き当たっては曲がり、ぶつかっては折れして往くと、行く手から露っぽい外気が、煙のように暗黒をさいて来て、廊下のはずれは出入口らしく、ほんのりと夜光が浮動している。
 われ知らず、女の歩調が早くなったとき、
「ちっとあやかりてえものでごぜえます。へえい! そんな
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