るあいだに、長いこと猿ぐつわをかまされたように気がぼうとなったと見えて、どこか路ばたに車がとまっていたことや、それから、ずずっと二、三寸鎧櫃があとずさりして、頭が背後へ倒れて車が坂道へ差しかかったらしいことやなどは、今でも夢か現《うつつ》に覚えているが、その余のことはさながらこの櫃の中の四角い暗闇同然、女はいつしか失神していたのだった。
で、今ここで気がついたときも、まだがたびし[#「がたびし」に傍点]車上におどっているように感じたが、その心持ちがしずまって、いままでのことが走馬燈のように、一瞬に女の頭を走り過ぎると、突如いいようのない新しい不安が羽がい締めのように、鎧櫃の中の女をとらえた。
鎧櫃は確かに下におりている。
が、外部の気配が、不思議にも櫃の中の女の心眼に映じて、どうもここを牛の御前のお旅所とは受け取れないのだ。
戸外ではない。なんとなく屋根の下らしい――家の中?
とすれば、いったい全体自分はどこへ、誰の家へ来たのだろう?
思い切ってあけて出ようか。と考えて、下からそっと覆を押し上げていたが、中の女は知らないもののがんじがらめの締め緒に錠がかかっているから、持ち
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