識を取りもどしたのだった。
 が、身はいまだ鎧櫃にこもって荷物のように折れ曲がっている。濃い小さな闇黒《やみ》が、眼に近くしっくり[#「しっくり」に傍点]と押し包んでいて、朝眼がさめたときのように、女が前後の事情を思い出すまでにはちょっとのまがあった。
 どこだろうここは。
 本所牛の御前のお旅所のはず!
 ――とこの一つが心によみがえると、引き出した端をくぐらせて、もつれた糸玉を解くように、あとは、小口からすらすら[#「すらすら」に傍点]と女の記憶に浮かび上がって来た。
 あれは神田連雀町津賀閑山の古道具店だったかしら?
 そうそう、あそこでこの鎧櫃にはいったのだったっけ。
 そして、あれから?
 こうっと、あれから?
 本所割り下水石原新町のそば、牛の御前の旅所へ届けるように頼んで、ぱたんと覆《ふた》をしてもらったのだが、あの閑山とかいうお爺さん、だいぶあっけに取られていたようだよ。でもまあ親切なおやじでよかったこと。こうしてあたしのいうとおりに路《みち》を運んでくれたんだから――。
 それにしても、浅草から駕籠を追っかけて来たあの仲間、ほんとにしつこいったらありゃあしない。だけど
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