も、よく見ると、その全部が、その一人ひとりが、世にも奇怪な服装をしているのだ。いや、服装というのは当たらぬ。これは服装ではなくて袋、そうだ、単なる黒い袋といったほうが妥当かもしれない。
こころみに、手近の一人をとって観察するに、頭から足の爪先《つまさき》まで、一枚の黒い布に包まれているのだ。手も脚《あし》も黒いだぶだぶの袋だ。
つまり、頭から四肢、胴体といったぐあいに、人間の形にできている黒衣の袋、それへ人間がはいって、手首と足首とで胴体を締めているので、おまけに手には黒の手ぶくろ、足には足袋《たび》ようのものをはいていて、頭には袋に作りつけの頭巾《ずきん》をかぶっているから、外部《そと》から見えているのは、両の眼がのぞいているだけだ。どこからどこまで黒いぶくぶく[#「ぶくぶく」に傍点]の袋が歩きまわっているとしか見えない。
なるほど、こうしていれば、たとい何人集まろうと、どこの誰だか、いや、男だか、女だか少年だか老人だか、お互いにさえいっさいわからぬわけである。異様といおうか怪絶といおうか、ただもう妖《あや》しいながめであった。
この同じ服装《なり》の人物が無慮三百人もうろつ
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