うせたのか。方来居の手入れに、蟻のはい出るすきまもないほど取り囲んでおいて、万遺漏《ばんいろう》なしと不意に侵入して家内を捜索すると、おどろいたことには家人のほかに客一人いずに、家の中はがらんどうで、家族は今の今まで眠っていたらしかった。
 しかし、今晩この庵《いおり》で水藩高橋一派の秘密会合があって首領高橋多一郎以下十五、六人の人間が集まることになっているのは、かれらの仲間の一人となって隠密の役をつとめている遊佐銀二郎の口から知れているし、のみならず、夕刻から方来居の近くに伏せておいた腹心の者どもからも、種々雑多な風体の輩《やから》が闇黒にまぎれて続々と草庵の裏木戸に吸い込まれたというしらせもあって踏み込んだことだから、よもや間違いとは思われない。
 広くもない家のことだ。他に隠れ場があろうとも見えないが、念のためと畳を上げ、壁をたたき、竈《かまど》の奥から雪隠《せっちん》の中までほとんど夜っぴてのぞきまわったが、猫の仔《こ》一匹出て来はしない。屋根から、床下も見落としはしなかった。
 これは税所邦之助が不思議に耐えなかったところだが、そうした家探《やさが》しの結果も無効に終わって、
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