の押し込みが横行して、昨夜は本郷、今夜は芝といったふうに、ほとんど毎晩八百八町を荒しまわったが、先夜この男女の強盗が万願寺屋という品川の造り酒屋へはいって、大奥のお賄方《まかないかた》から酒の代に下しおかれた五百両の小判を奪い去ってからというものは、いっそう詮議がきびしくなった。
 というのは、あまり眼にあまるというので江戸中の岡っ引きが真剣になりだしたわけであるが、実をいえば、眼じるしのある小判を持って行ったというところに御用聞きは非常な望みをかけたのである。遠からず一枚ぐらいは市《まち》へ出てくるだろう――というので、それぞれ町方へ手配をして桝目の小判の現われるのを待っていたが、いくら待っても一枚も出てこない。
 これは出ないわけだ、お蔦が大事をとって使わないで、肌身《はだみ》離さず胴へ巻いて持ちまわってるのだから。
 で、いろは屋文次をはじめ岡っ引き一同が手のつけどころがなくて困っていると、いわゆる天の助けというやつで、津賀閑山が例の鎧櫃取りもどしの一件を頼みこんで来たところから、はしなくもお蔦の居所だけは文次はつきとめることができたが――。
 お蔦の相棒だった男は何者であろう?
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