行った。
振り返って見ると、もういない。
「何じゃ、妙な奴じゃな」
邦之助、供をかえりみる。
「さようで――おおかた夜遊びの御勤番衆ででもございましょう」
見間違いということもある。守人ではなくて、たぶんそんなところだろう――ということになって、主従無言で歩き出した。
あそこから八丁堀までかなりある。で、帰り着いたころは夜もすっかりふけ渡っていた。
と、疲れ――もちろん邦之助はつかれていた。が、疲労以外のからだのぐあいが邦之助を襲い、その四股《てあし》をしばっているように感じられた。門から玄関へかかるのが邦之助にはいっしょうけんめいだった。式台へ上がろうとして、彼はくつ脱ぎの上へべたり[#「べたり」に傍点]とくずれてしまった。それでも夢中でうめくように何かいいつづけた。
「花――ことによると、死に花かもしれぬ! か、からだをあらためてみい。は、早く、早く!」
とせき立てながら、自分は泥沼へでも沈むように刻々気を失ってゆくらしかった。
迎えに出た妻と供の男が驚いて、邦之助のからだをしらべてみた。
と、長さ五分に足らぬ小さな草が、邦之助の首筋に吸い附いて、皮の下に、青い細い
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