と修行をかねて身を隠すには、この姿見の井戸に越したところはなかろう」
 というきてれつ[#「きてれつ」に傍点]な話。
 同伴《つれ》があると道は早い。
 いつしか広小路へ出ている。
 上野の森へかけて流れ星が一つ夜空をかすめた。

   あの女は生きております

 神田連雀町の裏、湯灌場買い津賀閑山の古道具店へ、一人の侍がはいって来たのは、小半刻《こはんとき》まえのことである。
 主人《あるじ》の閑山とは顔識《かおし》りの仲とみえて、親しげに腰をおろして、それからこっち、またぽそぽそ[#「ぽそぽそ」に傍点]と話しが続いている。
 ここへ、三味線堀からいろは屋がまわって来たが、店にお武家《ぶけ》の客がおると見ると、横手の露路《ろじ》について勝手口へ顔を出した。
「今晩は。おう、久七どん、俺だ、文次だ、いるかえ」
 そうっとあけると、鎧櫃《よろいびつ》以来おなじみの飯たき久七が、おびえたような恰好できちん[#「きちん」に傍点]と板の間にすわっている。
「どうした。久七どん、えらく片づけているじゃあねえか」
「しっ!」久七が制した。「来てるだあよ。お店へ来てるだあ」
「来てる? 何が来てる?
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