く眠った。あっはははは」
「ほんとによくお眠《やす》みになりましたねえ」
女も即座にけろりんかん[#「けろりんかん」に傍点]とよそ行きの口調に返っている。
「面目ないが、何か寝言でもいいましたかえ」
「いいえ。べつに。ほほほ」
と要領を得ている。
「そうですかえ。とにかくまあ、かぎつけられた巣に長居をすることはない。そろそろお出ましということに。――いや、これは暗いな。なあに、灯はいらない。からだ一つ持ち出せばいいので。はて、と。――この辺に矢立てが――お! あった、あった。これでこのへんのところへこう一つ――」
何一つ盗まれる心配はないから、家の中なんかそのままにして二人はさっそく土間へおりた。
外部からしめた障子へ、手探りながら筆太に何かすらすら[#「すらすら」に傍点]としたため終わると、里好は女を促して悠然《ゆうぜん》とめっかち長屋をあとにした。
行く先は奇怪至極な井底《せいてい》の集会所。
大股《おおまた》に肩を振って行く里好宗匠のあとから、両袖を胸へ重ねたお蔦が、白い素足を内輪に運ぶ。
先に立ったまま里好がいう。
「井戸の入口で黒い袋を渡されて、顔もからだも包む
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