かな、わっはっはっは、いや、おはよう」
あから顔の四十男、でっぷりふとって、狂歌師よりも質屋のおやじという人がら。不器用な手つきでお米をといでいる。
「どうかね、よくお休みになれたかな」
「はい。どうも昨晩はいろいろとお世話様になりまして、ありがとうございます。おかげ様で――」
「おっと! 礼には及びません。わしもまだ御挨拶《ごあいさつ》をしない。ま、そんなかたっ苦しいことは抜きにしましょうや。さ、顔を洗ったり、顔を洗ったり。井戸かね。長屋の裏にある――お! お前さん、気にさわったらごめんなさいよ。何かいわくがありそうだからきくんだが、戸外《そと》へ出てもいいからだかね? なんならわしがくんで来てやるが」
「はあ、いえ、あの、かまいません」
渡る世間に鬼ばかりもいない。
何から何まで届く人、伯父さんとでも呼びかけたいような――。
釣瓶《つるべ》うつしに冷たい水で顔をしめしながら、女は、幾年にもなくふ[#「ふ」に傍点]と甘い幼《おさな》ごころに返った。
誰かの胸に泣いても泣いても泣き足りないのはこのはかなさ。
思えば、津賀閑山の店からこの家へ来るまで、なんというめまぐるしい運
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