ぼ」に傍点]しても六日のあやめだ。
美人をかつぐ代わりに、臭気ふんぷんたる真っ黒くろ助の帝釈丹三を遠巻きにした一行が、すごすごともとの坂へかかったころ。
東天紅。
と一声、早い一番|鶏《どり》の鳴く音。
お江戸の朝は、まず薄紫の空から明けはじめる。
三味線堀《しゃみせんぼり》の宗匠|手枕舎里好《たまくらやりこう》
ここは下谷《したや》、三味線堀《しゃみせんぼり》。
めっかち長屋の一|棟《むね》、狂歌師|手枕舎里好《たまくらやりこう》と名乗る男の家である。
よほどぐっすり眠ったとみえて、女が眼をさましたときは、一間きりない部屋に、もうだいぶ長い陽脚がさし込んで、勝手もとで主人《あるじ》の里好の味噌《みそ》をする音がしていた。
寝過ごしたのが気恥ずかしくて、いそいで、起きようとすると、夢で泣いたものか、枕紙がひんやり[#「ひんやり」に傍点]湿っている。きのうからのことが思い出されて、おびえたこころは泪《なみだ》っぽくなっていた。
手早く床をたたんで身じまいをした。敷き蒲団の下に入れておいた金包みを肌《はだ》へ巻くには、音のしないように気をつけなければならなかった
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