の家の遠い親戚なのです、父にも母にも早く別れてしまつてたつた一人ぽつちです、ここの叔父さん(彼は秋川駿三の事を叔父とよんだ、しかしこれは所謂おじさんであつて、叔父甥という程近い間ではないのだろうと思う)のお世話で、中学を出て目下某私立大学の経済学部におり、本年三月卒業したばかりですが、まだ就職口も見つからないので、大学院に籍をおいております、在学中はラグビーの選手をしておりました」
そう云つてたくましい腕をちよつとさすつて見せたのである。
「君は昨日はいつ頃ここに来たのかね」
「夕方でした。このごろ近くに一軒家をかりておりますが、夕食を皆と一緒にたべるために五時すぎにやつて来ました」
「今聞けば君は、さだ子と婚約中の人だそうだね」
「そうです」
「では夕食後、さだ子の所で話でもしていたのかね」
「は、そうです」
「ずつと夜まで?」
「いや、実は、叔母によばれまして、叔母と話しておりました」
若者の顔にはちよつと不安そうな色が浮んだ。検事はそれを見逃さなかつたらしい。
「君はその時叔母さんと何か争つていたのではないかね」
16[#「16」は縦中横]
「争い? 別に争い
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