さいましな」
「お父さんには無論ききます。……では夕食後あなたは?」
「私自分の部屋にはいつて小説を読んでおりました」
「小説つてどんな本です?」
藤枝が妙な質問を発した。
ひろ子は藤枝の方を見ながら、親しそうなようすで、
「ヴァン・ダインのグリーン殺人事件という本ですの」
とかるく答えた。
「ああ Greene Murder Case ! そうですか」
藤枝はこう云つてぷかりと煙を輪にふいた。
「あなたはずつと部屋にいましたか」と検事。
「いえ、それから八時頃ちよつと母を見舞いに座敷にまいりました。すると」
「すると?」
「そこで伊達さんが何か母と話しておりますので、すぐまた部屋に戻りました」
「伊達はずつとお母さんの所におりましたか」
「まもなくさだ子の所にまいつたようでした。今度はさだ子が母の所に行つたようでした」
「ほほう。どうしてそれがわかりました」
「私が手洗いにまいりました時、さだ子の部屋の前を通りましたの。その時、ふと妹に用があるのを思い出してノックしながら戸をあけますと、中に妹がいないで伊達さんが一人椅子に腰かけておりました。で、私はさだ子はおりませんの? と
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