ききますと、今お母様の所に行つているつて、伊達さんが申しました」
「その時、あなたは伊達のようすに何かへんな所を感じませんでしたか。たとえばへんにあわてた様子とか……」
ひろ子はほがらかに笑いながら答えた。
「伊達さんは、妹の許された婚約者ですもの、妹の部屋にいるのを見られたからつて、あわてなんかなさいませんでしたわ」
14[#「14」は縦中横]
「では、その後の事はききましたから、今日はこの位にしておきましよう」
ひろ子はかるく検事に挨拶し、それから藤枝と私の方に礼をしながら去つた。
「君、君がきいたあの小説は一体何だい」
検事は一息ついたという形で、新しい朝日に火をつけた。
「ありや君、有名な探偵小説だよ。グリーン家の人々が一人ずつだんだん殺されてゆくというとても[#「とても」に傍点]凄い話なんだ」
「それをあんなきれいなお嬢さんがよむのかね」
「うむ、そんなこたあちつとも不思議はないさ。この頃の令嬢の趣味は、第一にスポーツ、第二に探偵小説かね。――そうでもないかな、第三か、第四かね。しかしともかく、よく読むよ……だがグリーン事件とは」
藤枝はここで妙に考え
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