におりましたが、この二月《ふたつき》程前から近所に小さい家を一軒借りておられます」
 検事は何かちよつと考えていたが、ふと何気なく訊ねた。
「妹さんの婚約はもう余程前からですか」
「いえ、まだこの二ヶ月前ぐらいです」
「では婚約と同じ頃に伊達という人が別になつたのですね」
「はい、つまり妹が結婚致しますと伊達さんが今いる家に入るわけになるのでしよう。でも詳しいことは私よく存じませんわ」
「もう一つききますが、その婚約には御両親は無論賛成されたのでしようね」
「はい、父は大へん喜んでおりました。むしろ父の方から進めた話なのです」
「では、お母さんは?」
 私は、この時のひろ子の複雑な表情を決して見逃さなかつた。
「母も……母も婚約そのものには別に反対は申さなかつたようなのでございます。ただその条件について父とは大分意見が合わなかつたようで……」
「条件というのはどういうことです」
「なんでも財産のことなんですの。なんでも父はさだ子にかなりの財産をつけて嫁にやろうと申すのでしたが、母がそれについて反対のようでございました。でも、私そういうことよく判りませんから、なんでしたら父にきいて見て下
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