うそをいうものであり、捜査方針を誤らせることがあるのを充分心得ていたものと見える。
 検事の質問は意外な方向にとんだ。
「きのうあなたはずつと家にいましたか」
「いいえ、用事でひるから出かけました」
 彼女はこう云つてちよつと藤枝の方に目をやつた。
「そうしていつ頃帰宅しましたか」
「そうです。多分四時すぎ頃でした」
「それから夕食までは」
「夕食までずつと下の広間でピアノをひいておりました」
「お母さんは、あなたの帰宅当時どんなようすでしたか」
「母は座敷に、床《とこ》をしかずに横になつておりました」
「では、薬屋に風邪薬をとりにやつたことは少しも知りませんでしたか」
「はい、母が死ぬまで存じませんでした」

      13[#「13」は縦中横]

「妹さんにさつき聞いたのですが、夕食には家族の方が全部一緒だつたそうですね」
「はい、それに伊達正男さんが加わつていました」
「伊達という人は妹さんの婚約者ですか」
「はい、左様でございます」
「いつもあなた方と一緒に食事をするのですか」
「はい。来られますといつも一緒に」
「ではこのやしきに住んでいるのではないのですな」
「最近まで邸
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