アにノックが聞えた。検事の声に応じて開かれたドアの所には、ひろ子が美しい顔をあらわしていた。
「あの、私をおよび出しになるだろうと思つてまいりましたのですが、はいりましてもよろしゆうございましようか」
 ひろ子はさだ子の取調べがすんで、自分が呼ばれると思つていたのに、意外に手間どつたので、待ちかねてはいつて来たものと見える。
「ああ、あなたはひろ子さんですね。ちようど今来て貰おうと思つていた所でした。どうかこの椅子へ」
 検事はこういうと朝日の喫いさしをポンと机の上の灰皿にほうりこんだ。
 検事のひろ子に対する取調べも最初はさだ子に対すると同じく、主として駿三の供述に従つたもので、一応その供述を簡単に彼女に述べたのだが、ひろ子の答も大抵それと同じであつた。
「では、昨夜あなたが騒ぎで起された所から話して下さい」
「私が昨夜床に入りましたのは多分十時頃だつたかと思います。いつも枕に頭をつけるとすぐ眠る習慣なので、昨夜もそのまま眠つてしまいましたが、夜半《よなか》にふと目がさめました。後から考えますと、これはつまり父と妹が母のねまの戸を叩いていた音の為に起されたのでございましよう」
「その
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