はないようです。……それから徳子の屍体のそばにあつた包紙ですがね。すぐ本庁に送つて調べて貰つていますから、もう判るでしよう」
 警部が一気にこうしやべつた時、ドアが開いて女中があらわれた。
「あの、[#「あの、」は底本では「あの、 」]電話でございます――警視庁で……」
 警部はいそいで立ち上つて出て行つたが、やがて暫くすると戻つて来た。
「今、包紙を調べたそうです。少し粉末がついていたのでそれを調べた結果昇汞だという事が判りました。純粋の昇汞だそうです。何もまじつていないという事です」

      10[#「10」は縦中横]

「昇汞? 昇汞をのんだんだね」
「鑑識課で調べた粉末はたしか昇汞だという事です。前後の状況から見て徳子の呑んだのはどうも昇汞らしいですな。野原君も木沢医師も同意見です。ことに木沢医師はかけつけた時、徳子の苦しみ方や、嘔吐の模様からして、昇汞じやないかと感じたそうです。なんでも二ヶ月程前に牛込のある病院で、看護婦が昇汞で自殺した時にかけつけたそうですが、その時の看護婦の様子とよく似ていたと云つていました」
「無論屍体解剖をやれば明白になることだが、昇汞嚥下は先
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