一包の粉薬を入れ、封じて店においておくと間もなく、秋川家の女中がそれを取りに来たので、勿論なんら怪しむ事なくそれを渡したのでした。
そこで肝心の粉薬ですが、これは絶対に間違いはない。なんでもアンチピリンを|〇・《ポイント》四だけ作り、これを包に入れ『頓服一回、秋川さだ子殿木沢先生御処方』と記して渡したそうです。此の点について、店の薬剤師二人ともその時、主人が作る所を何気なく見ていたそうですが、絶対に誤なしという事です。
ところで今また行つて見ますと、主人は、帰宅した所で、うちをあけておおいに恐縮して語りましたが、そのいう所によれば全く、さきの供述と同じです。私が領置した薬用袋をもつて行つて見せましたがたしかに、それは彼自身の渡したもので、字は自身で書いたにちがいないという事です。ただ封の所が破つてありますが、封緘紙が袋についたままでいますから、どうも薬局でアンチピリンを入れたのに、途中で誰かが外のものにすりかえた、という事も考えられぬようです。西郷には後刻警察に出頭するよう一応命じておきましたが、同行した二人の医師も一応帳簿などを調べましたが、それによつても、どうも云つている事に嘘
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