きも申した通り、私はけさ早く、木沢医師から秋川徳子変死の報をきくとすぐかけつけましたが、薬の紙、その他証拠品を領置すると同時に、何より先に西郷薬局店にかけつけ同家について取り調べたのです。
かくの如き変死者の出た場合、自殺であろうと、過失死であろうと、あるいは他殺であろうといずれの場合であれ、徳子が何をのんだかという事を第一に確かめる必要があると信じましたから。
ところが薬局に行つて見ますと、生憎主人の西郷幸吉という男は昨夜、仲間の宴会があつてそれに出たまま未だ帰らぬ、という事でした。そこで数名の雇人を取り調べたのです。
それらの供述は甚だ自然でありまして、昨夕、秋川家から電話がかかつて、二女さだ子に、木沢医師が数日前に処方した風邪薬の頓服薬を一包用意してくれと云うことだつたので、無論薬局では、さだ子ののむものと信じて木沢医師処方の粉薬を作つた、電話は雇人が取りついだが直《ただち》に主人に話したので主人自ら調剤したそうです。あそこには雇人として薬剤師の免許をもつているものが二人もいるのですが、その時は主人自ら調剤したそうです。主人は無論薬剤師です。
そうして西郷薬局と書いた袋に
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